Cryopreservation Conference 2020 でご講演いただく皆様と研究内容を紹介いたします。
◎松村 和明(Kazuaki Matsumura)
北陸先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 マテリアルサイエンス系 物質化学領域
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我々は高分子を用いたバイオマテリアルの研究を行っています。機能性高分子は、ドラッグデリバリーシステムや再生医療などの分野で活躍しています。我々はその中で、両性電解質高分子が細胞懸濁液の凍結時に凍結ダメージから保護することを発見しました。この高分子の凍結保護作用の機序の分子レベルでの解明や、幹細胞保存などの再生医療分野への応用など、化学および生物学の観点から低温生物学に関する研究を続けています。
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◎黒田 浩介(Kosuke Kuroda)
金沢大学 理工研究域 生命理工学系
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我々の研究室では、イオン液体と呼ばれる“常温で液体の塩”を研究しています。イオン液体は電荷を有する溶媒であることから、水とも有機溶媒とも異なる性質を示す第三の液体として知られています。またイオン液体は、そのイオン構造を変化させることによって様々な性質・機能を付与できる珍しい溶媒です。我々の研究室では、低毒性なイオン液体を2017年に開発することに成功しました。それ以来、低毒性なイオン液体を利用して何かできないだろうかと考え、「細胞の凍結保存剤」としての利用にたどり着きました。凍結保存剤としての研究はまだまだ始まったばかりで分からないことだらけですが、皆さまと活発な議論ができることを楽しみにしております。
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◎杉山 弘和(Hirokazu Sugiyama)
東京大学 大学院工学系研究科 化学システム工学専攻 工学部化学システム工学科
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《シミュレーション技術によるヒトiPS細胞の緩慢凍結プロセス設計》
ヒトiPS細胞の効率的な大量生産に向けて、凍結保護剤から凍結プロセス・装置、サプライチェーンに至る各スケールで研究の進展が求められている。講演者らは、ヒトiPS細胞の緩慢凍結プロセスを対象に、シミュレーション技術を応用したマルチスケール研究を展開している。研究の起点として、Mazurの二因子仮説に基づく一細胞凍結モデル(Hayashi et al., Comput Chem Eng, 2020)を構築した。この数理モデルは既知の傾向を再現できており、シミュレーションによって凍結速度やバイアル容器サイズの決定に用いることができる。さらに講演者らは、凍結保護剤の探索や、装置のスケールアップ検討にも取り組んでいる。講演では、これら直近の研究活動と今後の展望を紹介する。
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